主婦ブロガー・バニラファッジさんに聞く在宅介護の極意とは?

取材・文/木村寿賀子(オイコス)
2016年06月15日(水)
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介護に必要なのは「忍耐」ではなく、「ツッコミ」と「スルー」スキル!? 子育てと介護の日常をつづった人気ブログ「7人家族の真ん中で。」の著者・バニラファッジさんに、在宅介護の難しさ、うまく乗り切るコツを伺いました。

在宅介護の秘訣は「多くの人の手を借りること」

──お義母さんと、叔母さんの2人を介護されていたわけですが、在宅介護を選択されたのはどうしてですか?

バニラファッジ:もともと介護が始まる以前から、夫の実家で母屋と離れの二世帯住宅で同居していたんです。義母は今で言うシングルマザー。昔で言うところの『出戻り』。そして妹である叔母は今で言うおひとりさま。昔で言うところの『いかず後家』です。要するに、この母屋が2人にとっての生家。長年慣れ親しんだ住まいなんですね。在宅介護を選んだ根底にはこうした2人の生い立ちや家への強い思い入れが強く影響していると思います。同じ同居でも、これが息子家族の住む家に親を呼び寄せた形なら、在宅介護は選んでいなかったかもしれません。

──2人同時の在宅介護というとさぞかし大変なのではと感じるのですが。

バニラファッジ:介護度でいうと、義母は認知症を患っていますが、それ以外の疾患はなく、要介護3。叔母はリウマチと骨粗しょう症を患っており、要介護5の状態でした。介護サービスは、義母には週3回の入浴介助、叔母には週5回の起床介助と週3回の訪問入浴、週3回の訪問リハビリをお願いしていました。それと、介護保険対象外ですがわが家では9時から午後1時まで家政婦さんに来てもらっています。いろいろな人が、毎日のように入れ代わり立ち代わり訪問していましたので、いつもにぎやかでワイワイと介護していました。

──在宅介護を続けられた秘訣はその辺にありそうですね。

バニラファッジ:そうですね、外部のいろんな手を借りられたことが大きいですね。在宅介護を続けるために、介護保険の高額利用や家政婦さんの費用がかかりましたが、2人とも公務員で定年まで勤め上げているので、老後の金銭的な備えもあり、介護にかかわる費用はすべて姑たちの貯蓄から出すことができました。それと、わが家が二世帯住宅だったことも在宅介護にはよかったようです。介護が必要になってたくさんの人が家を出入りするようになりましたが、元々二世帯住宅で玄関も別だったので私たち家族のプライバシーは守られ、さらに介護のための全面改装を加えたことで介護ストレスは少なくなったと思います。

初めての介護保険認定調査。叔母から出てくる要望は「嫁に頼みたいけど頼みにくいこと」だった(マンガ/バニラファッジ)

自尊心を傷つけないために介護では1対1にならない

──在宅介護で重要なこと、バニラファッジさんが心がけたことはどんなことですか?

バニラファッジ:相手の自尊心を傷つけないことです。それはちょっとした仕草や言葉で起きることもあります。また、自分が傷つけられることもあります。ですから、介護は1対1にならないように、できれば複数でお世話ができるといいですね。たとえ食事を食べさせるのはいつも自分でも、その様子を横で見ている人がいるだけで全然違います。どうしても誰もいない場合は、その役はペットでもいいです。わが家は2匹の猫を飼っていますが、ずいぶん助けられました。

──バニラファッジさんの場合は2人同時の介護で、いつも3人だったことがかえってよかったのかもしれませんね。

バニラファッジ:そうですね。確かに被介護者が2人になれば、その分、人手は必要になり、肉体的には大変ですが、3人であれば、義母が吐く毒や、叔母の愚痴の矛先も分散されますし、義母、叔母のやりとりを私は一歩引いたところから冷静に見ることもできたように思います。


──用事もないのに何度も呼びつけられたり、同じことを繰り返し言われたり、会話がかみ合わなくてイライラすることもありますが、バニラファッジさんは上手に受け止めて、さらに、独特のユーモアで切り返されてますよね。

バニラファッジ:例えば、認知症の義母の場合、家族もよかれと思って声をかけるのですが、すぐに義母が怒るので手をやいていました。特に、肉親である叔母や夫は、昔のしっかりした義母を知っているので、歯がゆくて喧嘩になることもありましたね。ですが、嫁である私はそれを一歩引いたところから見られるので、冷静に甘やかしました。とにかく、家族がうまくいくように私が間に入ろうという感じです。被介護者への声かけや動作などは、家政婦さんや介護ヘルパーさんたちの様子を参考にしました。みなさんやはりプロなので上手なんですよね。

──ところで、介護施設への入所を検討されたことはなかったんですか?

バニラファッジ:叔母のリウマチが悪化し、かかとを骨折して入院したときに在宅介護の限界を感じ、医療型介護施設を見学に行きました。清潔で介護設備も医療体制も充実した施設でしたが、実際に叔母が利用するサービスはリフト付きのお風呂くらいで、それ以外は自宅で過ごすのとあまり変わらない状況で、結局施設入所には至りませんでした。実は叔母は昨年末、先立ったのですが、死因は肺炎でした。かかとを骨折し、入院してからの1年は体力の低下も著しく、あのとき介護施設に入所していたら、もう少しきめの細かい介護ができたのかなと考えることもあります。後悔とはちょっと違うのですが。

──最後に、今現在、介護に直面されている方に、メッセージをお願いします。
バニラファッジ:私が介護で辛いと思うのは、自分が迷っているときです。「様子を見に行くべきか」「声をかけたほうがいいか」「おむつを今、替えたほうがいいかどうか」「施設入所したほうがいいか」──など、小さな決断も大きな決断も迷っている間はとても辛いです。とにかくスパっと「私はこうする!」と決めて、突き進んでください。もちろん一人で抱えないで、家族とその「決断」を共有することが大切です。家族がいなければ、病院やサークル、介護保険などを利用して外部の人とつながってください。介護は1対1では苦しくなります。みんなでワッショイワッショイとにぎやかにできるといいですね。

頑固だった義母は認知症が進み「フェアリー」と呼ぶ状態に。そんなときもあわてず、怒らず、否定せず。受け入れて、かつ、本人が忘れないうちにつっこむのもバニラファッジさん流(マンガ/バニラファッジ)

取材協力

バニラファッジ
主婦兼母親兼ブロガーとして忙しい毎日を送る。3人の子育てと姑シスターズの在宅介護の日常をコミカルに描いたブログ「7人家族の真ん中で。」(http://carmine-appice.cocolog-nifty.com/)は、開設10年目で2億5000万アクセスを突破。著書に『スーパー嫁の汗と笑いの在宅介護』、『91歳毒舌系女子、喧嘩を売って生きてます』『86歳乙女系女子、恋の力で生きてます』(主婦と生活社刊)

取材・文/木村寿賀子(オイコス)
2016年06月15日(水)
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