昔懐かしき路地が巡る長屋風高齢者向け住宅は、 同じ敷地内で連携する介護サービスも充実

SUUMO介護編集部
2014年12月10日(水)
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徳島市の郊外にある「シニア向け長屋住宅 あさがお邸」は、入居者の月額所得に応じて徳島市からの家賃補助が受けられる高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)だ。総戸数は18戸と小規模だが、大きな特徴は徳島県産の杉や珪藻土など自然素材をふんだんに使用した日本家屋の住戸が、路地を巡るように建てられている点だろう。この路地は「向こう三軒両隣」という言葉を想起させる古き良き時代の雰囲気を醸し出しているだけでなく、地域住民と一体になった祭りやバザーなどのイベント会場にも利用されている。社会福祉法人「あさがお福祉会」の、このユニークな試みを取材してみた。

路地に沿って立つ、自然素材を多用した伝統工法の高齢者向け住宅

医療法人あさがお会を母体とする社会福祉法人あさがお福祉会が、徳島市郊外にシニア向け長屋住宅 あさがお邸(以下あさがお邸)をオープンしたのは2012年4月。旧高齢者住まい法による高齢者向け優良賃貸住宅制度を活用した高齢者向け住宅(高優賃)だが、コミュニティレストラン「小料理屋うてび」(以下レストラン)と「小規模多機能型居宅介護あさがお」(以下小規模多機能)を併設して、地域交流を図るとともに、介護が必要になっても小規模多機能から24時間の支援を受けることにより、可能な限り在宅で暮らせるように考えられている。しかも高齢者向け住宅と小規模多機能・レストランは、すべて徳島県産の杉や珪藻土など自然素材を多用した伝統的な日本建築の建物で、昔懐かしい路地をはさんで建てられているのが特徴だ。
「同じ敷地内に総室数50室の『ケアハウスあさがお』を運営しているんですが、なかには集団生活になじめない方もいて、それが理由で退去される方もいらっしゃったんです。そこでもっと落ち着いて静かに生活できる住宅が必要と考えたことと、私どもには特別養護老人ホームがありませんから、介護度が重度化しても一生住み続けられる高齢者向け住宅の必要性をかねがね感じていたことがこの高優賃を建てた理由です。路地のある長屋住宅というかたちにしたのは、住むならこんな家にという自分の憧れを追求した結果ですね」というのは、あさがお福祉会の法人統轄施設長の保岡伸聡さん。建設に際しては、徳島市の高優賃補助金のほか、県内産木材使用の木造建築物にすることでNPOの「木造公共建築物・木質バイオマス利活用施設の整備資金等への利子助成事業」(借入金の利子が15年間補填される)と農林水産省の「森林整備加速化・林業飛躍事業補助金」を活用することもできた。
「そうやってイニシャルコストをおよそ1億5000万円ぐらい削減したことに加え、高優賃の家賃補助がありますから、所得にもよりますが食費を入れても月額10万円以下で住んでいただけることが可能になりました」

住宅と介護の現場を分離して、自然を感じる機会を

あさがお邸は、小規模多機能とレストランが入った木造在来工法2階建ての建物の周囲を巡るように、路地をはさんでコの字型に配置されている。18戸ある住宅のうち、自立者向けとされている6戸は屋内廊下に面した出入口とは別に玄関が設けられ、直接屋外の路地へ出ることも可能だ。路地には軒が差し掛けられ、縁台のような収納式のベンチもあって、まさに長屋のような感覚といえるだろう。
「高優賃のあさがお邸と小規模多機能を分けたのは、住宅と介護の現場を分けたかったからなんです。高齢者住宅の生活ってどうしても建物のなかだけになりがちですよね。あえて別にして渡り廊下で結んだのは、入居者の方々にいったんは外に出て雨や風など四季の自然を感じてほしかったからなんです。本当は同じ建物内のほうが管理も楽なんですけどね」と保岡施設長。あさがお邸の見守りについては、日中は職員1名が常駐、夜間の緊急時には小規模多機能の職員が宿直で対応している。
あさがお邸の居室は1階が自立者向けを含め12戸、2階が6戸で、それぞれに共用スペースとして食堂がある。居室にはミニキッチン、トイレ、洗面はあるが浴室がなく、1階に2カ所、ヒノキを使った共用の浴室と介助浴室が備えられている。居室は現在18戸満室で、入居者18名のうち要介護者12名全員が隣接の小規模多機能を利用しており、訪問介護や通所介護のサービスを受けているという。
「残りの6名のうち5名は要支援の方々で、ここのデイサービスや訪問介護を利用している方が3名、残り2名はあさがお以外の介護サービスを利用されています。通い慣れたところをそのまま利用したいという方には、そのままそちらに通っていただいております」
小規模多機能は2階に8室の宿泊室を備え、1階はシアタールームや畳の間、浴室などを併設したホール(食堂)がある。ホールには薪ストーブが設置されているうえに、畳の間の外のデッキには足湯もあって居心地のよい空間となっている。

入居者だけでなく地域にも開かれた介護と住宅と医療

あさがお邸の向かいには、認知症高齢者のための「グループホームあさがお」の建物があり、ケアハウスあさがおと隣接している。さらにグループホームの建物には、「居宅介護支援事業所ケアネットあさがお」「デイサービスセンターあさがお」「ホームヘルパーステーションあさがお」が併設されている。
「近い将来、小規模特養も開設したいと考えています。そうすれば自立の方を対象としたケアハウスあさがおに入居された方が、介護が必要になればケアネットあさがおで作成したケアプランに則ってデイサービスや訪問介護を利用できるし、あさがお邸に移って小規模多機能を利用することも可能です。さらに認知症になられた方はグループホームあさがおに移ることができますし、要介護度が重度になれば小規模特養に移って、そこで最終的な看取りも受けられるようにする予定です。療養病床のある医療法人あさがお会の病院もすぐ近くにありますから、入居者の方々の心身の状態に合わせて適切な介護サービスと住宅と医療が用意されているというわけです」と保岡施設長。
とはいえここは、決して閉じられた場所ではない。ケアネットあさがおやデイサービスセンター、ホームヘルパーステーションは、ケアハウスあさがおやあさがお邸の入居者だけでなく、地域住民の利用も多い。
「コミュニティレストランのほかにも、ケアハウスあさがおの1階には『茶房うてび庵』を開設しました。徳島でも有名なおいしいコーヒー屋さんのコーヒーを出すコーナーや駄菓子屋を設けて、入居者の方や地域の方、職員の交流の場として役立てています」
さらにケアハウスあさがおの2階には介護予防パソコン教室を設けた。新しいものにふれる喜びと社会的交流の場を提供することにより、入居者や在宅の高齢者の介護予防や認知症予防に努めている。講師は同じ高齢者のボランティアで、最高齢はなんと82歳になるという。

新たなデイサービスセンターで高齢者の就労支援を

あさがお邸の入居者のひとりMさん(86歳)は、2012年4月に徳島市の自宅から入居をしてきた。実はその前年、いったんはケアハウスあさがおに入居したのだが、慣れない環境に体調がすぐれない日が続き、オープン間近のあさがお邸への転居を決めたという。
「ケアハウスもあさがお邸も自分の判断で入居を決めました。ひとり暮らしは不安だし、食事や買い物、掃除、お風呂などが大儀になりますしねえ。自宅のすぐ近くに娘の家族が住んでいたんですが、いちいち面倒をかけるわけにもいかないですから」とMさん。
いっぽうTさん(76歳)は、長男家族があさがお邸の近くに居住しているという縁があって、徳島県の郡部からの入居だった。
「車でないと日々の買い物ができないようなところだったんです。ここだったら病院へ行くにも毎日、送迎バスが出ているし本当に便利です。食事もおいしいし、友だちもいっぱいできて本当に入居してよかったと思っています」とTさん。年齢は離れているがMさんとは「弥次喜多なんですよ」というほどの仲良しで、2人とも月1回の外食デイと週1回のお買い物デイを非常に楽しみにしているという。
あさがお福祉会では来年4月ぐらいをめどに、ここから5〜6分の位置に高齢者の就労支援のためのデイサービスセンターを開設しようとしている。入居者や地域の高齢者にデイサービスセンターの厨房に立ってもらい、そこでつくった惣菜やパンをあさがお福祉会の高齢者向け住宅や地域にデリバリーしようという計画だ。
「MさんやTさんも、多少ストレスを感じながらも社会的属性のあるほうが元気でいられると思うんですよ。高齢者の方に働いてもらって、その対価をうちの介護サービスやレストランの料金から引くという方法も考えています。仕事なので甘やかしません。自分は必要とされているんだという気概をもっていただけたらいいんですけどね」と保岡施設長。さらに将来的には、小規模特養に加え認知症デイサービス・ショートステイ、またさまざまな福祉事業も計画しているとのこと。トータルで社会福祉法人の本来の目的である弱者への支援を追求していきたいという。

シニア向け長屋住宅 あさがお邸 DATA

物件名:シニア向け長屋住宅 あさがお邸
運営:社会福祉法人「あさがお福祉会」
所在地:徳島県徳島市大原町外籠

SUUMO介護編集部
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