小学校の校舎を再利用。広々とした空間に、保育園や地域の高齢者向けサロンも同居する“新たな方向を示す住まい”

SUUMO介護編集部
2014年11月19日(水)
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サービス付き高齢者向け住宅「ケアホーム西大井こうほうえん」

品川区西大井にある「ケアホーム西大井こうほうえん」は、鳥取県米子市に拠点を構える社会福祉法人こうほうえんが、かつては区立小学校だった建物を再利用して開設したサービス付き高齢者向け住宅だ。教室1室を2つに分けたという個室は小さくても20㎡以上、約32㎡の1人部屋も26室あり、廊下や共有スペースも広々として開放感がある。さらに注目すべきはサ高住でありながら、特定施設入居者生活介護(以下、特定施設)の指定を受けているため、介護付有料老人ホームと同じようなサービスが定額で受けられることだ。公設民営で高齢者向け住宅の新たな方向を示す、ケアホーム西大井こうほうえんを取材してみた。

90年の歴史ある小学校を介護と保育の拠点に

ケアホーム西大井こうほうえん(以下、ケアホーム西大井)は、もともと1923年(大正12年)に創立された歴史のある区立小学校で、2007年に移転した校舎を再利用して開設されたサ高住だ。同じ建物内に認可保育園の「キッズタウンにしおおい」と地域の元気な高齢者の活動・交流拠点となる「西大井いきいきセンター」を併設した、「ヘルスケアタウンにしおおい」という複合型施設の中心として2009年にオープンした。

「品川区が高優賃・保育・敬老会館の3つを一括開設し運営することを条件に、土地・建物を20年間無償貸与するということで、全国の社会福祉法人に募集をしたわけです。こうほうえんはもともと鳥取で、子どもと高齢者と障害のある方がともに生活するという施設をつくって運営してきた歴史がありますので、それが評価されて選ばれたんでしょうね」というのはケアホーム西大井の施設長で看護師の資格も持つ田中とも江さん。開設時には48人の定員に対し150人もの応募があったという。当初は特定施設の指定を受けた高優賃だったが、2011年の高齢者の住まい法改正とともにサ高住へと移行した。

“尊厳ある排泄ケア”が高齢者の自立を促す

ケアホーム西大井で特に力を入れているのが“尊厳ある排泄ケア”だ。これまでオムツだった高齢者にトイレで用が足せるようにすることによって、生きる意欲やADL(日常生活動作)が格段に向上するというのだ。

「私は長年、精神科病院や老人病院で働いてきましたが、そのなかで寝たきりの高齢者と認知症の高齢者は例外なくオムツを当てていました。当時はなんのアセスメントもすることなく、失禁するからオムツを使い、患者さんがそれをはずそうとするから身体拘束は当たり前のようになっていました。でも、患者さんにしっかり向き合っていくと、尿や便を受けとめるオムツに下半身を包まれているなんてとんでもなく不快な状態だと思えてきたんです。その不快さに対するメッセージとして、不穏症状とか行動障害とか多くの問題が起きているわけですね」と田中施設長。

要介護度5の人でも看取りが必要となった人でも、トイレで自排尿をしてもらうために、「ゆりりん」という超音波測定器で膀胱内平均容量と残尿量を測り、その人の排尿のタイミングに合わせてトイレに誘導するように努めた。下剤が中心だった排便コントロールはオムツにたまった不消化便が尿路感染症を引き起こすことから、水溶性食物繊維を活用した排便ケアに変えることで「快便」をもたらした。

「以前、お尻の褥瘡がひどくて骨が見えていた方が入居されたことがあったんですが、トイレで自排尿・自排便してもらうことで3カ月でそれが治りました。あとは食事やベッドから起きてみんなと暮らすことです。寝かせきりにしないというのが私たちの目標です」

品川区と社会福祉法人の助成で家賃を低額に

小学校を再生利用した建物だけに、個室も共用スペースも広々としているのがここの特徴だ。1人用で20~30と広めなのがここの特徴だ。全室トイレと洗面、ミニキッチン、洗濯機置き場、収納が付いており、月額家賃は10万円を切る。所得に応じて品川区の賃貸補助もある。

「社会福祉法人は事業税が無税ですので、そのぶん地域還元をしなければならないことが義務づけられています。そのため品川区とは別にこうほうえんから、年収により最大で5万円の家賃軽減をしています」というのはヘルスケアタウンにしおおい事務長の蔭山直之さん。もっともコンパクトな部屋なら、月額家賃4400円で入居できる場合もあるという。これに基本サービス費、共益費、食費、介護保険の1割負担、保険外の生活支援サービス費の支払いが必要となるが、実際に月々いくらくらいかかるのか、入居者の声を聞いてみよう。

2012年12月に品川区の一戸建て住宅から入居してきたYさん(96歳女性)は、2009年のオープンと同時に長男Yさんが入居を申し込んだが待機となり、2年後にようやく空きが生まれ入居となった。その間、病院や老健などの介護施設を渡り歩いてきたという。

「現在、このホームからの請求額は月額15万円~16万円ぐらいでしょうか。これにはベッドや布団の借用料や契約している薬局の薬代などが含まれていますが、お医者さんの訪問診療や衣類の洗濯代は別ですから、合計すると20万円弱ぐらいの負担になりますね。本人の年金と父の遺族年金、足りない分は本人の貯金でまかなっています」(長男Yさん)
Yさんも品川区とこうほうえんからの助成は受けているが、これぐらいの自己負担が必要になる。

高齢者と地域の人々を結ぶ保育園といきいきセンター

ヘルスケアタウンにしおおいの1階には認可保育園キッズタウンにしおおいと、これまでのシルバーセンターを発展させた西大井いきいきセンターが設けられている。2階と3階にあるケアホーム西大井の入居者は、いきいきセンターに碁を打ちに行ったり麻雀をしに行ったり、自由に行き来している。無料の入浴施設もあるので、ここを利用している入居者も少なくない。
いっぽうキッズタウンにしおおいの園児は、0歳児から小学校入学前の6歳児までの120名。ケアホーム西大井への出入りが自由でふだんから交流があるが、敬老の日や毎月の誕生会、ハロウィーンなど季節ごとの行事やイベントはできるだけ合同で行っているという。

「お年寄りとの交流で、子どもたちに優しさが生まれますね。高齢者の方には優しくとはいってはいないのですが、自然に優しく接するようになっちゃうんですね。顔から違ってきますよ。核家族で、お年寄りが家にいないからよけいにそういう気持ちになるんでしょうね」と高橋祐子園長。

ケアホーム西大井の食事は外部委託だが、管理栄養士の指導のもと建物1階の厨房でつくられている。ひとりひとりの体の状況や好みに合わせて、徹底した個別対応をしているというのが自慢だ。
「例えば、ソフト食であってもこの食材だと食べられないとか、常食でもこのおかずだったら嚥下障害の方でも問題ないとか、入居者のオーダーにより管理栄養士が逐一対応をしています。食事中も介護スタッフがしっかりと見ていますので、うちでは今まで窒息とか誤嚥性肺炎はありません」と田中施設長。よい排泄の条件のひとつとして食事の全量摂取を掲げるこうほうえんでは、食事に対する配慮も並々ではない。

ケアホーム西大井こうほうえん DATA

物件名:ケアホーム西大井こうほうえん
運営:社会福祉法人こうほうえん
所在地:東京都品川区西大井

SUUMO介護編集部
2014年11月19日(水)
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